ルークが立ち去ってしばらく。
彼にもらったクッキーを手のひらに乗せたまま、イサはそれを食べるか食べまいか迷っていた。
“食べたら、マイと一生一緒にいられるんだよな……”
マイは、幼い頃に別れた初恋の人だ。
コエテルノ·イレニスタ王国を建国してから毎日のように彼女と一緒にいられて、イサは幸せだった。
こんな日々がこの先もずっと続くのだと思っていたけれど……。
「マイの気持ち、ちゃんと聞いてない!」
クッキーを食べる前に、しなくてはならないことがある!
それに気付いたイサは夜間着をベッドの上に脱ぎ捨て、窓際で朝日を浴びていた冒険用の衣装に着替えた。
本音を言うと、クッキーを食べて一刻も早くマイを連れ戻したいと思う自分もいる。
「でも、それじゃダメだ。
自分でできることは全部自分でやるべきなんだ!
じゃなきゃ、父さんやディレットと同じになる!!」
他力本願な生き方をするのは嫌だった。
イサが上着のポケットにクッキーをしまおうとすると、部屋の扉がそっと開く。
「……!」
ドアノブに触れてこちらに視線をよこしてくる者を見て、イサはたじろいだ。