空に浮く、マイの新しい住家。

ガーデット城やルーンティア城のように豪華な装飾はないが、どんな外敵も寄せつけない強い城が出来た。

広いバスルームとプール。

料理が作れるダイニングと、フカフカで大きなベッドも作った。

「これが今日から、私の城っ!」

マイは、出来上がったマイホームの中を歩きながら気分を浮き立たせた。


改めて考えると、ものの30分でこの城を完成させることが出来たのは、すごいことかもしれない。

人間の技術力と体力では、建築に半年程かかるだろう。

“……もし私が魔法使いじゃなく、人間として生まれていたら……。

魔法使いの力を、心底欲しがったりしたのかもしれない”

やっぱり、自分は人間の住む世界にいてはいけないと、マイは再確認した。


イサは、剣を振るいながら毎日のようにこう言っていた。

『マイが魔法を使わなくたって、俺がこの剣術でマイを守るからな!!』

それは、ヴォルグレイトのしたことに対する罪滅ぼし的な意味ではなく、純粋にマイの体力を労って言ってくれた言葉。

マイはそれに心を奪われ、イサに全てを委ねたいと感じる瞬間もあった。

一方で、彼女にとってイサが愛しい存在になればなるほど、自分の体の中に流れる魔法使いの血を恐ろしいと感じるようになっていた。