空のはるか彼方。

飛行機が飛ぶ位置よりも、高いところ。

部分的に雲で視界を阻まれる上空に、マイはいた。

ここからだと、地上の建物や木々が砂粒ほどの大きさに見える。

コエテルノ·イレニスタ王国も、まばたきをしたら見失ってしまいそうなくらい遠くに見えた。


マイは魔法で岩石を出現させ、次々とそれを固めて土台を作っていく。

あの丘で一人暮らしをしていた時のように、素朴な木製の一軒家でも良かったのだが、これだけ高い位置に家を作るとなると、それなりに頑丈な素材を使わなくてはならない。

空には龍の子孫と言い伝えられる飛行系の魔物が多く住んでいる。

“イサがいてくれたら、剣術であっという間に倒してくれるんだろな……”

ふと、イサの稽古風景を思い出し、胸がしめつけられる。

イサは、コエテルノ·イレニスタ王国にも剣術の練習場を建設し、常時生徒を募っていた。

剣術を使える人が増えれば、国の防衛力も高まる、と、イサは考えたのだ。

イサは、朝早く起きて剣の手入れをしたり、空中に向けて術を放ったりしていた。

“ここ1年で、剣術をしてるイサの姿がいっぱい見れたなぁ”

次々に思い出し、マイの目には涙がにじんだ。

「もう!! ダメじゃん!

旅立ってまだ1日も経ってないのに、最初っからこんな弱気になるな!!」


とにかく、魔物からの物理攻撃に耐えられるような家を作らなければならない。

木材やステンレス。

イサへの想いを打ち消すように、様々な物を魔法で生み出し、小さな城を築いていった。

城が出来たら、浮くようにしかけを施す。

そうすれば、マイの家は完成だ。