マイは空に、自分だけの住家を作ろうと考えた。

浮遊する城を築くのだ。

決して、人間がたどり着けない場所に……。


「生まれて15年間。

上手に生きてきた自信はないけど、人と出会えてよかった。

歴史を知れて本当によかった。

……みんな、幸せになってね。さよなら」

遠くなってゆくコエテルノ·イレニスタ城に向けて、マイはつぶやいた。

みんな、今頃は眠っているだろう。


「……それでいいのか?」

背後で落ち着いた声がした。

マイが振り向くと、そこには17~18歳ほどの少年の姿。

「ルーク……!」

マイは、自分と同じように宙に浮いている少年を見つめた。

ルークとは、昔一緒に、恋の願いが叶うクッキーを作ったことがある。

「黒水晶が無くなったのに、何で!?」

ルークと再会出来た喜びと、目に見えない生命体になったはずのルークと出くわした驚きで、マイの涙はひいた。

黒水晶消滅にともない、肉体も失ったはずのルークは、クスッと笑い声を漏らし、

「僕達は、新しい黒水晶を作ったんだ」

「そんなことができるの!?」

「僕たち自然の神に不可能はないよ。

イサから聞いてると思うけど、1年前に壊した黒水晶第1号を作ったのも僕達だしね」

どこからか借りてきた本を片手に、ルークは得意げに上半身をそらす。