イサは、人間が魔法使いを利用したり差別しないための法律を作った。
しかしマイは、人の欲望や弱さは、法律では縛れないと考えている。
魔法使いが人間と共存する限り、将来また、同じような過ちが繰り返されるのは目に見えている。
ならば、一人で誰にも気付かれないような場所に住み、命尽きるまで誰とも関わらずに人生を送ろう。
マイはそう思った……。
「魔法使いがこの世界に生まれてきたのは間違いだったんだ。
私の能力は、人の心を弱くし、狂わせてしまう。
頑張って生きる人達の尊い力や可能性を摘み取って、欲望の化身にしてしまう。
この力は、もう、人のために使ってはダメなんだ……!」
最後、イサの夢に協力するため、魔法をふんだんに使って国を作ったが、それはマイにとって、人間への恩返しであり、罪滅ぼしの気持ちがこもっていた。
「私の命が尽きる時、魔法の力は同時に消える。
もう、誰のことも振り回さない。
それが、いちばんいいことなんだよ……」
暗い歴史や人間の悪意に絶望したのではない。
人間の良さや強さ、無限の可能性を、マイは知っている。
彼女は、魔法使いが存在していたせいで、人間達にいらぬ争いを繰り返させてしまったのだと考えていた。
何でもやってのけるこの力がなかったら、イサもエーテルも、フェルトもレイルも、大事な肉親を失わずに済んだはずだ。
みんなは過去を吹っ切り、マイと共にコエテルノ·イレニスタ王国の繁栄に力を貸してくれたが、自分の存在を否定しているマイにとって、みんなの優しさはつらいだけだった。