セレスが扉を閉める。
パタンと鳴る小さな音を見届けてから、イサはこう切り出した。
「……ヴォルグレイトが犯したたくさん罪は、きっと何をしても、償えるものじゃない。
歴史にも大きく残るだろうし、息子の俺も、今後は、安易にしゃしゃり出たらいけない立場になってしまった。
それは、分かってるんだ。
でも……。このまま、今回のことを、歴史上の記録だけに留めたくない。
都合のいい話だって分かってるんだけど。
……マイ。俺と一緒に、新しい国を作らないか?
魔法使いと剣術師が支え合っていける国を……。
イブリディズモの差別や、魔法使いを利用する人間なんていない。そんな国を……」
マイは一呼吸置いたあと、床に座り込んだままのイサに言った。
「イサ、立って。そんなことしなくていい」
イサはためらうように立ち上がり、マイの話を聞くため、再びベッド脇のイスに腰を落ち着けた。
横になっているマイの右手を、骨っぽい彼の両手が包む。
イサの力強いぬくもりは、マイの胸に刻まれた様々な痛みを癒してくれるようだった。
「……素敵な夢だね。
平和な世界。
争いのない国。
イサならきっと、実現できる。
……私にできることなら、何でも協力するよ」