マイは枕に頭を沈めた姿勢で、かすかに首を横に振った。

「イサが謝ることない。

嬉しいよ。私、今まで何も知らずに生きてきたんだもん……。

いつの間にかあの丘で一人暮らしをしてて、その間、人から敵意を向けられたり、すり寄られたりもして……。

私はみんなと同じ人間なのに、どうしてそんな扱いをされるんだろう、変な目で見られるんだろうって、不思議で不思議で仕方なかった。

たしかに、私には人と違う能力があるけど、それだけなのにどうしてって、疑問が尽きなかった」

「うん」

「……でも、今、イサにいろんな話を聞いて、納得できた。

私は、最後に生き残った、たった1人の魔法使いなんだね……。

それには大きな意味があったんだってことも分かった」


マイは、没落した母国·アスタリウス王国を想い、静かに静かに涙を流した。

魔法使い一族は、どのような気持ちで支え合っていたのだろうか。

もし、現在もアスタリウス王国があったなら、世界はどうなっていたのだろう。

自分以外の魔法使いが存在する日常とは、どんな感じなのだろうか。

マイは、もう味わえないであろう出来事を空想し、夢を描いた。