イブリディズモと《共存派》の追放は、最後、《利用派》の立場をも追い詰めることになった。

《共存派》に襲撃された魔法使いの一部が、《利用派》の人間たちに働かされていた魔法使いを助け出したからである。


レイナス亡き現在、彼の本音を知る方法はないが、イサはこう思った。

そういった暗い歴史を知らずとも、レイナスはある程度過去を推測していたのではないか、と……。


黒水晶をマイに封印した数十年後、レイナスの祈りは砕け散った。

マイが暴走させた黒水晶の力は、先進国として世界的に有名なガーデット帝国の広大な領地と城下町、その拠点となる城を一瞬にして吹き飛ばしてしまったのだから……。


幸い、イサが国民に避難命令を下すのが早かったため、ケガ人や死者は一人も出なかった。

ガーデット領内から逃げ出してきた者は皆、ルーンティア共和国に仕える常駐兵士達の案内で、ルーンティア城下町にある宿や城内に身を置き、安全を確保することができた。


イサは、自然の神達に聞いた歴史全てをマイに話し終えた。

マイは青い顔で一生懸命、事態を理解しようとしていた。

彼女の細い両手は、小刻みに震えている。