イブリディズモは、「混血児である」という理由だけで、純正の人間から差別されるようになった。

《利用派》の人々によって、《共存派》の迫害と追放が始まったのだ。


これ以上《共存派》やイブリディズモの人口が増えたら、純正の人間の数が減る。

そしたら、《利用派》は魔法使いを利用できなくなるかもしれないし、次は、自分達が魔法使いに制圧されてしまうかもしれない。

《利用派》の人間達は、そうなる未来を恐れた。


魔法使いの力によって願望を満たされた《利用派》の人間達は、昔に戻りたくないと願う。

今ある豊かな暮らし。

手にした冨や名声を手放すなんて、死ぬのと同然。

思い通りにならない人生に戻るのなんて、ごめんだ。

非力な人間時代に戻りたくない。

《利用派》はそう考えた末に追い詰められ、イブリディズモと《共存派》を徹底的に抹消しようと、各地で行動を起こした。


学校に入学する前の子供達には、血液検査を義務付けた。

子供がイブリディズモだと判明すれば、その子は入学させない。

結果、世界を知らない無知な子供が増えた。


企業の求人募集に関しても、差別が行われた。

働きたい者が純正の人間であっても、魔法使いの配偶者がいたり、イブリディズモの子供を養っているような者は、どこの企業でも働かせてもらえない。

運よくどこかで働かせてもらえるようになっても、差別された者の賃金は《利用派》の人間の10分の1もなかった。


イブリディズモは成人すると職に就けず、難民と化し、餓死(がし)する者も多数いた。

《利用派》がはびこる時代だから、当然、死んでも墓を建ててもらえない。