取り乱すマイをなだめるように、イサは彼女の頭をなで続けた。
「黒水晶は壊れたよ。
マイ。自然の神達のこと、覚えてる?
旅の途中で出会ったアルフレドと、マイをナンパしてきたグレン。
彼らの他にも、自然の神は3人いた。全部で5人。
みんなで黒水晶を破壊し、マイの暴走を止めてくれたんだ」
「うそ……」
イサの言葉を疑うわけではないが、黒水晶を壊せる存在がいるなんて信じられない。
困惑するマイに語りかけたのは、セレス王妃だった。
「やはりあなたは、黒水晶に操られていた間のことは何も覚えていないようですね。
……私はその瞬間を直接見たわけではありませんが、自然の神達と出会ったイサ様に、全ての報告を受けました。
自然の神達が、ギリギリのところであなたの暴走を止め、黒水晶を破壊した、と……」
「アルフレドやグレンが、私を止めたの?」
「ええ。そもそも、黒水晶を生み出したのは彼らなのだそうですよ」
「そんな……。アルフレド達が黒水晶を!?
何のために!!」
興奮するマイを、イサがなだめた。
「黒水晶の本来の役割は、人間達の悪意から魔法使いを守ることだったんだって……」
イサは、自然の神達に聞いた話をマイに伝えた。
黒水晶を破壊した後、神達は、魔法使いと人間の間で紡がれた暗い歴史を、イサに語っていたのだ。