「マイ様……!! 

目が覚めたのですか!」

マイがベッドから落ちた時の音を聞いていたのだろう。

部屋の外に控えていた執事らしき男性が、室内に入ってきた。

年齢は30~40代ほどだろうか。

ピシッと着こなしたスーツは、機敏に動く彼によく似合っている。


執事はマイを横抱きにして再びベッドに寝かせると、

「マイ様。本当によかった……。

あなたは、一週間も眠り続けていたのですよ。

そのまま目を覚まさないかもしれないと、心配しました」

一週間。彼は、マイの見守り役として、毎日この部屋へ足を運んでいたそうだ。

「あの、ここは?

イサは?

なぜ私がここに?

他のみんなは?」

自由に体を動かせない分、マイはまくし立てるように口を開いた。

「ここはルーンティア共和国の城内です。

イサ様は、今後のことについて、ケビン様やセレス王妃とお話をしています。

マイ様、今は安心して、ここでお休みください」

「ケビン様とセレス様……」

二人はルーンティア共和国の国王と王妃であり、エーテルの両親でもある。

「…………」

マイは、目の前の男性に尋ねたいことが山ほどあった。

しかし、執事はそれ以上のことを話す気はなさそうだ。顔にそう書いてある。

イサが無事だと分かっただけで、今は良しとしよう。

マイは仕方なく納得し、ベッドの中で目を閉じた。

亡きエーテルへの想いを反芻(はんすう)しながら……。