涼やかに響く鳥の鳴き声。
半分ほど開かれた窓から吹き込む爽やかな風が、水色のカーテンをふんわりとひるがえす。
その向こうに広がる蒼い空は晴れ渡っていた。
マイは、知らない部屋のベッドの中で目を覚ました。
高級な宝石がちりばめられたシャンデリアの輝きが、寝起きのまぶたにしみて痛い。
“ここはどこ?”
何かに縛られているわけではないのに、体が動かない。
まるで、全身に鳥黐(とりもち)を絡められているかのようだ。
「っ……」
声にならない声が漏れる。
“体が重い……”
部屋にある全ての物が、優しい色をしていた。
枕カバーに毛布。
装飾品……。
それに相反するように、マイの頭の中には、逃れようのない苦しい現実の数々が流れ込んだ。
ディレットによってエーテルが殺された時、憎しみの感情に包まれ、黒水晶を呼び出してしまったこと。
エーテルが亡くなったことにより、長年マイにかけられていた記憶封印の魔術は解けてしまった。
それにより、マイは自分の生い立ちと過去を何もかも思い出すこととなった。