「何でも出来ちゃうんだな、魔法って……」

驚きと同じくらい、イサは戸惑いを感じていた。

人間に恩返しをしたいというルークの気持ちは理解できる。否定する気もない。

けれど、その魔法能力のせいでマイは人間に命を奪われそうになったり、多くの人間に利用されようとしていた。

「魔法って……。

人をおかしくするだけなんじゃないの……?」

イサは暗い表情でそうつぶやく。

犬猿の仲らしく、終始いがみ合っていたルークとグレンも、イサの言葉に気付きうつむいた。


「……そうね。

人間には力を持たない愚か者が多い。

己の利益のため簡単に他を犠牲にし、異質な者を排除しようとする臆病者ばかり。

だからこそ、私たちは魔法使い一族を放っておけなかったのよ……」

一人の女性がそう言った。

彼女はいつの間に現れたのだろう。

「あなたは!?」

驚きをあらわすイサとは真逆に、その場にいた自然の神達は全員、彼女の登場を予感していたように冷静だ。


年の頃は20代後半。

彼女は品のある和服に身を包み、肩にかかる亜麻色の長い髪を右手でサラッと払った。

その仕草が、やけに艶(つや)っぽい。


「リジェーノ!」

グレンは彼女の元に駆け寄った。