イサは動揺し、ルークに尋ねた。
「本の礼をしたいのは分かるけど……。
本の持ち主全員にそんなものを配り歩いてたら、人間の間でウワサにならないか?
恋が叶うクッキー、なんてさ……」
ただでさえ、一部の人間は、魔法使いや魔法の力を利用しようと画策している。
それを知っているからこそ、マイは人の心を変化させる薬の製造を好まなかったのだから……。
ルークがその問いに答えようとした時、アルフレドが口を挟んだ。
「グレンならともかく、ルークのやったことだ。心配ないだろう」
グレンはすかさず反発した。
「なっ! アルフレドひどくね!?
ルークなんて、雰囲気からしてうさんくさいし、俺の方がずーっとマシだ!
俺だって、マイとコラボしたら最高に素晴らしいアイテムを作れるはずだぜ!」
本気で断言するグレンに、アルフレドは一言サラッと、
「お前の手が加わった魔法薬など、恐ろしくて飲めるものか……」
ルークは片眉を上げ、グレンとイサに向き直った。
「誰がうさんくさいだとっ。グレンにだけは言われたくない。
まぁ、話を戻すけど……。
剣術師の少年。ウワサの心配なら、いらないよ。
クッキーを食べた人間は、クッキーを食べたことすら記憶から消える。
すなわち、自分の努力で恋が叶ったと思い込むんだ。
ゆえに、人間界にその話が広まることは絶対にない」
ルークはルークなりに、人間界の秩序を考慮して動いていた。
アルフレドは最初からそれを察していたように、軽く目を閉じる。