仕事のことについて反論できなくなったグレンは、ルークが大事そうに抱えている書籍を指差し、反撃に出た。
「つーか、その本!
『人間の家から借りた』んじゃなくて、無断で盗んで読んでるクセにっ」
ルークは目を丸くし、薄い水色をした髪をわざとらしく片手で払った。
「盗んだなんて、人聞きが悪い。
たしかにこっそり借りていることに違いはないけど、ちゃんとお礼もしてるよ。
目に見える物でね」
「うわっ、それ怪しいな!
本の持ち主も、本が無事に返って来たって、それと一緒に怪しげなモン置いていかれたらこわがるだろっ」
グレンは意地悪な目で指摘したが、ルークは動じることなくサラッとこう返した。
「恋を叶えるクッキーを1粒、本を借りたお礼に、持ち主の家に置いていくんだ。
同じ家からは二度と本を持ち出さない、と、決めてね。
僕の見ている限りだと、今までクッキーを捨てた子はいなかったなぁ」
「恋が叶うクッキー!?
それ、俺にもくれよっ!
つーか、単なる風の神が、そんなもん作れるのかよっ?」
グレンはルークの両肩をつかんだ。
「『単なる』は余計だ。
お前に渡せるクッキーはない」
クールに言い放つルークは、風の神である。
淡い緑と水色を混ぜた衣装を個性的に着こなしているルークは、マイと面識があると口にした。