「おいグレン!

またマイに、変なこと言うつもりじゃないよな?」

「変なことって~?」

詰め寄るイサをからかうように、グレンはしらばっくれる。

「そっ、それはっ!!」

顔を真っ赤にして口ごもるイサに、グレンはニンマリと笑ってみせた。

「へ~! イサって、王子って立場にあるわりに、相変わらずヘタレなんだな。

『俺の妃にならないとお前の命はないぞ』とか言って、マイに迫ればいいじゃん。

そうできなくはない立場だろ?

王族の末裔(まつえい)なんだから」

「んな! んなことできるか!

お前みたいなバカと一緒にするなっ!

帝国の品位が下がる!」

「ガーデット帝国はともかく、お前なんて品位のカケラもないじゃんか。

そうやってノホホンとしてると、俺が横から取っちゃうかもしんないぜ~!?

マイは、怒った顔も冷たい態度もかわいいもんなぁ~」

「なっ! お前っ、仮にも神だろ!

なに寝ぼけたこと言ってんだ!」

「仮じゃねー! 生まれた瞬間から俺は正真正銘、炎の神だ!

神にだってな、恋愛感情はあるんだぜ!?

好きになるだけなら自由だろっ?

人間の世界で神がどんな風に言い伝えられてるか知らないけど、人間のエゴ押しつけんなよなっ!」

「エゴじゃない! お前は神の自覚が足りなさすぎだ!」

「なんだよ、自覚って!

人間の住む街付近の火山が噴火しないよう、俺は毎日飽きるくらい見張ってんだから、ちょっとくらい恋バナして楽しんだっていいじゃん!」

「恋バナって!

火山を監視するのもお前の仕事だろっ!」