「ディレット……!」

ディレットが自国の敵だということも忘れ、イサは踵(きびす)を返そうとしたが、レイルに力ずくで止められた。

「お前、バカか!

今ディレット様の元に行って、何ができる?

解決策もないくせに!」

「ないけど! このまま見過ごせって言うのか?

このままじゃあいつは……!」

「俺だって、何とかしてーよ!

でも、無理なんだ!」

レイルはイサの両腕を背後から締め上げた格好のまま泣き崩れた。

「ディレット様は道を間違えただけで、あの人の本当の願いは俺達と変わらないんだ……!

何とかしてやりたいよ!

でも、このままディレット様の安全を優先して他のことを放置したら、テグレンやリンネまでディレット様と同じ目にあうかもしれないんだぞ!

ルミフォンド様は我を忘れてるんだ。

お前の国の兵士達だって、巻き添えになるかもしれない!!」

「っ……!」

「お前って、王子を名乗るわりには情けなくてバカでどうしようもないヤツだけど、この国の王位継承者なのに違いはないだろ!?

だったら、自分の考えばっか貫こうとしてないで、自国の民の安全を第一に考えろ!

失ってからじゃ取り返しがつかないんだ!」


瓦礫(がれき)に阻まれてイサの目には見えないが、ガーデット帝国の民とルーンティア共和国、その他の国の人間も、この異常に気がついているだろう。

先進国の取材陣が押し寄せてくるのも時間の問題だ。