「あんたは!!」

黒い衣装の男·フェルトを見て、イサは驚愕(きょうがく)した。

「イサ、この人は?」

マイは見知らぬフェルトを見つめる。

「あんたはっ……!!」

テグレンは彼を知っているような反応をした。

「貴様……。何のつもりだ。

その魔術師を置いてさっさと立ち去れ」

ローアックスがフェルトにそう言うと、フェルトはひょうひょうとした様子で、

「私は、この子達の味方みたいなものでして。

……それに、あなたの攻撃魔術は不思議な……というより、不自然さがつきまとう。

私にもよく見せてもらえませんか? 研究したいな~」

と、ローアックスにつめ寄った。

ローアックスは青ざめ、

「なんだ、気色悪いヤツだな。触るなっ!!

その魔術師の命を奪うことは諦めてやる!!」

と、その場から消えてしまった。


「ありがとうございます。

エーテルを助けてくれたのは、あなたですか??」

マイはフェルトの方に駆け寄る。

「はじめまして、魔法使いのお嬢様。

私は、このエーテルさんと同じような存在で、フェルトと申します。

近くを歩いていたら不穏なオーラを感じたので、全力で走ってきたのです」

「走ってきたんじゃなくて、テレポーテーションの間違いじゃないのか」

イサがブスッとしながらつっこむ。

「あんた、オリオン街の人間だろ?

いつもマイの店のまわりをウロウロしてた……」

テグレンがフェルトを指差した。

「おや! 私のことをご存知の方がみえたのですね~。

この子の魔法薬はよく効くと有名だったので気になっていたんですが、入店する勇気がなくて。

あのお店は女性ばかりでしたから。


私は長い間オリオン街に滞在していましたが、あの土地の者ではありません」

爽やかな笑みをたたえてフェルトはこたえた。

話を聞いていたマイは言った。

「遠慮なんていらないですよ。

なんなら、いま、お薬を出しましょうか?

エーテルを助けてくれたお礼に……」

「ありがとうございます。

でも、今は特に悪いところもないので大丈夫です。

私はそろそろ行きますので、皆さん道中気をつけて。

では」

フェルトが消えてしまったのと同時に、エーテルが目を覚ました。