フェルトは未練を含んだ瞳を閉じる。
故郷を統治してくれた国王の息子·ディレットを倒す覚悟をしたのである。
「……あなたとは戦いたくなかったですが、仕方ありませんね。
レイル!!」
「……はい!!
ディレット様。すみませんが、俺達はあなたを止めます!」
「イサりん、この城が吹き飛んでしまったらゴメンナサイ」
フェルトはウィンクしながら床に伏せたイサを見下ろした。
全てをフェルトとレイルに託(たく)すように、イサは小さくうなずき目を閉じる。
“フェルト、レイル、すまない……。
全ては父のせいなのに、お前たちを母国の人間と戦わせてしまって。……胸が痛いよ。
この城共々、俺も消えるべき時が来たんだ。
もう……。何もかも終わるんだ……”
フェルト達を援護すしようとした、マイ。
今、戦えるのは、唯一無傷のマイだけだった。
「マイ。リンネ。エーテル。テグレン。
みんなは逃げてくれ」
最後の力を振り絞り、イサはふらついた体で立ち上がる。
マイを見つめ、彼は言った。
「俺はここに残る」