一同はアルフレドに出会った森を抜け、見通しの良い川沿いを歩いていた。

涼しい風が流れ、清らかな川のせせらぎが耳に優しい音を伝えてくれる。

再び何者かが現れることを懸念(けねん)して、イサは常にマイのそばで剣を手にして歩いている。

エーテルも薄く結界を張り続けていた。


予想通り、見知らぬ人影が現れたのはその直後だった。

しかし、アルフレドの時とは違い、今度の標的はマイではない。


「エーテル、危ない!!」

マイが杖から出した透明のシールドでエーテルをかばったため彼女は無傷でいられたが、その敵はエーテルの結界を破ってエーテルに手を下そうとした。

「エーテルの結界を破った!?」

イサはことさら驚いていた。


「あなたは誰なの?」

問い掛けるマイに、その人物はこたえた。

「名前など名乗ったところで何になる。

そこの魔術師の能力にかかれば、そんな記憶などアッサリ消されてしまうというのに……」

緑色の服を着た正体不明の男は、顔を頭巾で隠している。

「どういうこと?

エーテルが私達の記憶を消す?

そんなことするわけないじゃない!

エーテルは私たちを守ってくれている!」

マイの言葉に微笑し、緑服の男は言った。

「……ふっ。まあいいか。

我の名はローアックス。

魔法使いの君。君はだまされているんだよ。

早く逃げたほうがいい。

ルーンティア共和国は、君を食い物にする気なのだから」

その場の誰もが食いつくようにローアックスの顔を見つめる中、一番早く反応したのはテグレンだった。

「ローアックスとやら、それはどういうことだい?

マイやエーテルのことについて、何か知ってるのかい?」

イサは声を張り上げる。

「エーテルはマイの敵なんかじゃない!

ルーンティア共和国にも、そんな意思はない!

ガーデット帝国の次期王位を継ぐ俺が言うんだ、間違いない!

テグレン、はじめに言ったはずだ。

マイを危めることがあれば、俺は死んでもいいと……」