「こらこら。復讐なんてみっともない真似、やめて下さい。
あなたも、憎きヴォルちゃんと同類になってしまいますよ」
軽やかな口調で現れたのはフェルトだった。
「フェルトさん……!」
マイは魔法壁を維持したままフェルトを見遣る。
他の者も、彼の方に振り向いた。
フェルトのかたわらにいたレイルも、ディレットを止めるべく訴えた。
「ディレット様、やめてください。
俺も、ディレット様の気持ちは痛いほど分かる。
でも、殺し合いは新たな憎しみと悲しみを生むだけ……。
俺達のような思いをする人間を、これ以上増やしたくないんすよ!」
実感のこもったレイルの言葉に、フェルトは憂(うれ)いた笑みを見せ、ディレットは鼻を鳴らした。
「フェルトにレイル……。お前達も生きていたか。
しかし、再会の喜びも消え失せるほど失望した。
お前達は、トルコを愛していなかったのか!?
この国を憎く思わないのか?
仇討(あだう)ちは至当。
両親を虐殺され、友人の死に様を見せつけられ、孤独の涙を流したのは、俺だけではないだろう?
ヴォルグレイトは我々の国を滅ぼすだけでは飽き足らず、更なる自国繁栄を目論(もくろ)み、甘い蜜を吸おうとした。
そんな奴が統治してきた国など、この世に残しておく価値もない!!
民衆共々全滅させてやるのが今後のため、世界のため!!
禁断剣術書を所蔵しながらもそれに満足せず、ひたむきに生きたアスタリウスとトルコの民を潰したこの国が、ヴォルグレイトのことが、俺は憎い!!
こう思い巡らすことの、何が非道だと言う!?」