「国王……!」
父の対応に動揺しつつも、イサは仕方なく、鞘(さや)から剣を引き抜いた。
ヴォルグレイトは昔から熱くなりやすいところがあったが、今回もそうなのだろう。
「父さんがその気なら……。
手加減しません!!
私が勝ったら、本当のことを話していただきます!」
イサは覚悟を決めて、ヴォルグレイトの方に駆け寄り、剣を振り上げた。
親子同士の決闘。
城内は一気にざわついた。
皆が、冷や汗を流して戦う二人の姿を見ていた。
こうしてヴォルグレイトが暴走した時、止めに入るのは、いつもカーティスだった。
ヴォルグレイトは、カーティスに対しては素直で、彼に止められると刃向かうことはなかった。
だが、カーティス亡き今、この城中でヴォルグレイトに意見できる者はいない。
“ヴォルグレイト様の行いは絶対だ。
口を出したり、逆らったら、どうなるか……”
城の人間達は皆、そう思っていた。
尊敬と恐怖心をないまぜにした感情。
こわばる表情で、ヴォルグレイトとイサの戦いを見ていた。