ヴォルグレイトの言うことは、正しかった。

昔から、ガーデット帝国は他国の襲撃を受けてきた。

金品が儲かる、恵まれた広い土地を持っているからである。

その上、普通の人間では編み出すことが難しい《禁断剣術》を王室に隠し持っている。

そういった土地柄ゆえ、いま、城の者達は、イサの言葉を真に受けなかった。


カーティスが殺された時間帯に、ヴォルグレイトが執務室にいたと証言する執事も現れた。


だが、ヴォルグレイトに対するイサの不信感は消えない。

「カーティスは、ずっと、あなたのことを第一に考えてきたのに!

あなたの秘密を俺に話したカーティスのことが、邪魔になったんでしょう!?

だから、カーティスを……!!」

「……仕方あるまい。

口で言って理解できないと言うのなら、これで納得させてやる」

ヴォルグレイトは腰に携(たずさ)えていた鞘(さや)から剣を抜く。

噛み付くような顔でこちらをにらむイサに、その切っ先を向けた。