レイナスが隠していた魔法書には、こう書いてあった。
アスタリウス王国に代々伝わる《黒水晶》という名の黒い石。
……黒水晶。
それは、どんな願望でも叶える力を持つ奇跡の宝石。
黒水晶の存在は、アスタリウス王国の者しか知らない。
人間に知られたら、何が起きるか分からないからだ。
人間は弱い。
ゆえに、魔法使いを利用するか、殺そうとするか、どちらかだ。
そんな種族の手に黒水晶が渡ったら、良からぬことが起きるのは明白。
ゆえに、アスタリウス王国の先祖達は、黒水晶を守り抜いた。
彼らは、戦で人間の攻撃に追い詰められている時ですら、それを死守してきた。
代々、国王を務める人間が、黒水晶の保管を任されていた。
魔法書を読み終える頃、ヴォルグレイトの胸にはあたたかい希望の光が射した。
“これを…黒水晶を手に入れることができれば、もう一度、ルナに会える……!”
たとえひどい天罰が下されるとしても、それだけは叶えたかった。
“私はルナに、この世の楽しいことをもっともっと味わわせてやりたかった!
あいつはいつも、ベッドの上にいた。
自分のことより、周りのことばかり気遣う、優し過ぎるやつで……。
黒水晶を手に入れて、ルナを健康な体で蘇らせてみせる。
あいつのしたかったことを、全てやらせてあげるんだ……!”