国王専用執務室。
茜色の空が、まぶしい。
ヴォルグレイトは窓の外を眺め、計画がスムーズに進まないことに苦悶(くもん)していた。
「我が城に、ルミフォンドを連れてきた。
なのに、なぜ現れぬ!!
黒水晶よ………。
お前は、魔法使いの元に存在するのだろう……?」
ヴォルグレイトの野望を叶えるために必要なもの。
それは《黒水晶》と呼ばれる、この世にたった一つしかないと言われている秘宝のことだった。
ヴォルグレイトが黒水晶のことを知ったのは、11年前……。
禁断剣術を使ってレイナスを危めた時だった。
レイナスの部屋。
隠し扉のさらに奥。
複数の鍵をつけた宝物庫があった。
広い宝物庫の中には、たった一冊の魔法書が置いてあった。
人目につかないよう隠されていた魔法書には、黒水晶のことが書いてある。
当時、ヴォルグレイトは夢中でそれを読んだ。
“まさか……。
レイナスよ。
お前は、黒水晶共々、朽(く)ちたのではあるまい?
頭の回るお前のことだ。
なんらかの形で、黒水晶を包蔵(ほうぞう)しているのだろう?”
復讐心にまみれて決行した、アスタリウス王国襲撃。
その際、偶然、黒水晶のことを知り、ヴォルグレイトは諦め切れぬ願望を抱いた。