イサをはじめ、皆、絶句した。
動揺するイサをなだめるように、兵士は落ち着いた口調で告げる。
「そうでしたか……。
イサ様がそう思うのも、無理ありません。
私達も、まだ、信じられませんから……」
「…………」
「道場周辺の警備兵にも話を聞いてみましたが、不審人物の目撃情報は、今のところありません。
皆、困惑しております」
カーティスを殺害した人物に、イサは心当たりがあった。
“……父さんがやったのか!?
俺に肩入れしているカーティスのことが邪魔になって、殺した……?
昔、あんなことをしたんだ、父さんならやりかねない……!”
思いつめた表情のイサに、兵士は頭を下げ、
「イサ様。今すぐ、謁見の間にお越し願います……」
「わかった、すぐ行く。
マイ達は、ここにいてくれ」
イサは兵士に言った。
「お前は、この部屋の前で見張りを頼む。
俺のいない間、誰も通すな。
カーティスを手にかけた者が現れるかもしれない。
必ず、マイ達を守ってくれ」
「承知しました!!」
イサは素早く兵士に指示を出し、謁見の間に向けて駆け出した。
紅茶の匂いが漂うこの部屋に、ただならぬ空気を残して……。