マイとイサが城の出入口に着くと、テグレンが嬉しそうに二人を出迎えた。
「マイ! 無事でよかった…。
イサも、公務があるのに時間を割(さ)かせて、悪かったねえ…」
イサが公務を放り出してまで森に駆け付けてくれたことを知り、マイは謝った。
「イサ、ごめんね。
私、勝手なことした……。
城から出るなって言われてたのに……」
イサは首を横に振り、
「いや、構わない。
これも仕事だから。
じゃあ」
「……イサ」
ためらうマイを後にして、イサは颯爽(さっそう)とその場を去った。
わずかな間だが、イサはたしかにここにいた。
それなのに、それすら無かった出来事のように、当たりには透明な空気が漂う……。
イサの姿が通路の奥に消えた頃、テグレンはマイに尋ねた。
「一体、何しに行ってたんだい?
いきなりいなくなるから心配したよ」
「ごめん、テグレンにも心配かけたよね。
森まで、木の実を取りに行ってて……」
マイは、そうなったいきさつをかいつまんで話す。