森で、炎の神·グレンと別れたマイとイサ。

二人は、ガーデット城までの帰り道を共にしていた。


マイは、グレンとのやり取りを振り返る。

“やっぱり、世界はおかしくなってる……。

グレンやアルフレドだけじゃなく、他の自然の神様達も、今ごろ苦しんでいるかもしれない”

そんなマイの横顔を見て、イサは小さくつぶやいた。

「ルミフォンド……」

マイは弾かれたようにイサを見て、

「何か言った?」

「ううん、何も」

「ふうん……?」

マイはしばらく目をしばたかせていたが、再び、思いにふけった。


イサは思い出していた。

11年前、エーテルの手によってガーデット城から連れ出されたルミフォンドのことを。

エーテルは、自身の悲しみをこらえ、ルミフォンドのために違う人生を用意した。

イサもそれは十分理解していた。

エーテルを責める気持ちなど湧かないし、むしろ感謝している。


けれど、時の流れは早すぎて……。


イサは、マイに……。

かつてルミフォンドと呼ばれていた隣の少女に対し、

長年秘めてきた恋心が膨らみ続けるのを、どうすることも出来ないでいた。