エーテルは、昨夜と変わらぬ落ち着いた様子で説明する。
「昨日、あなたのオーラを読み取らせてもらった。
街に行き、そのオーラと同じ色の家を探し出し、屋内の荷物をまとめた」
「鍵はどうしたんだい?」
テグレンは恐る恐る尋ねた。
「鍵がかかっていても、物質を手元に引き寄せることはできる。
この家に護りの壁を残して、あなたの荷物をまとめに出かけた」
イサも驚いた。
「そうだったのか。俺が普通に護衛してる間に、そんなことまで……。
やっぱりエーテルの魔術は目を見張るものがあるな」
「私の残留魔術は完璧じゃないけど、そうできたのはイサの剣術に頼れると思ったから」
残留魔術とは、エーテルのいない場所にも魔術をかけられることを指す。
エーテルはまっすぐイサを見つめる。
テグレンはエーテルの配慮に感激し、
「ありがとうよ、エーテル。
この中には、大切な物が入ってるんだ。よかった……。
本当にありがとう」
「礼には及ばない。
私たちが勝手に押しかけたのだから」
と、エーテルは涼やかな瞳にかすかな笑みをもらした。
マイはテグレンに微笑みかけ、尋ねる。
「よかったね、テグレン。
それにしても、テグレンの大切な物ってなんだったの??」
「娘の写真だよ」
「えっ! 娘!? はじめてきいたよ……。
テグレンにも子供がいたんだね」
マイは驚きを隠せず声が裏返ってしまった。
「……ああ。家を出ていっちゃったんだ。この街へ来る前の……ずーっと昔の話さ」
「そうだったんだ……。ごめん、変なこときいて……」
マイは気まずそうにうつむく。