翌朝。
フェルトとレイルは、ルーンティア共和国の城付近に来ていた。
これからここで、ルーンティアを治めるケビン国王とセレス王妃の会見が行われる予定だ。
城の門前には、すでに多くの取材陣が集まっており、その手にはカメラやマイクがにぎられていた。
フェルトの横でその様子を見ていたレイルは、昨夜ローアックスが消滅したことを思い出し、こんな疑問を口にした。
「ローアックスは、ルーンティア共和国の禁断魔術によって操られていたかもしれないんすよね。
でも、それっておかしくないっすか?
ローアックスは、明らかにエーテルを狙ってました。
エーテルは、ケビン国王とセレス王妃の娘で、ルーンティアの次期王位を継ぐ人間ですよね。
それを考えると、ルーンティア共和国が、ローアックスを雇ってエーテルを襲わせるのは不思議っす。
ケビン国王は、死体を雇ってまで自分の娘を殺すつもりだったんすか?」
「レイルの言う通りです。
今の状況をそのまま見ると、ケビン国王がローアックスを雇って自分の娘·エーテルを狙った…ということになります。
ですが、私はそうは思えないんですよ。
ルーンティア共和国の人間にローアックスへの禁断魔術をほどこすように指示した者が、他にいる。
そう考えるのが自然ですね。
断定はできませんが」
フェルトは真実に気づいていそうな口ぶりだが、それ以上は語らなかった。
フェルトは、確実でないことは口にしない性格だ。
レイルはそれをわかっていたので、それ以上追求せず、ケビン国王とセレス王妃の顔出しを待った。
しかし、会見予定の時間を過ぎても、国王と王妃は会見席に現れなかった。
家臣の話によると、2人は急な外交で城を空けているという。
結局会見は行われず、何時間か待機していた取材陣たちは不満を口にしつつ、次第にその場を去っていった。
気がつくと、いつもの城の風景に戻っている。
「外交って、なんなんすかね?
どこに行ってんだろ……」
素直に状況を信じるレイルと違い、フェルトは神妙な顔つきだった。
「おかしいですね。
嫌な予感がします……」