翌日。
マイ達は、フェルトが手配してくれた宿をチェックアウトし、次の街を目指して出発した。
突然出発することになったにも関わらず、エーテルは穏やかに賛成した。
フェルトのおかげで、彼女の体調は完全に回復していた。
また、テグレンも、たまっていた旅疲れを、二日間の宿生活で癒すことができていた。
イサが先頭、エーテルが最後尾、その間にマイとテグレンを挟む形で、先へ進む。
途中、イサが昨日の出来事を話すと、エーテルは柔和(にゅうわ)な瞳でそれを聞いた。
マイが魔法の特訓をすることを知ると、エーテルも嬉しそうな声色で、
「私にも協力させて?
魔法学にはずっと昔から興味があって、知識だけはあるから。
マイなら、できるわ」
と、マイの背中を優しく押した。
イサとエーテル、二人の優しさに、マイは胸をほころばせる。
テグレンはそんな3人の姿を見て、
「魔法使いといっても、マイは魔法薬専属って感じだったから、戦闘経験は無いに等しいねえ。
でも、イサとエーテルがついててくれれば安心だよ。
私も見てるだけじゃ何だし、何か、魔法に関する本でも読んでみるかねぇ」
と、笑顔で言った。
さっそく、本日の昼ご飯休憩の後から、マイの魔法特訓が行われることになった。
初めての修業と言ってもいいだろう。
誰かから、何かを学ぶ貴重な時間。
未知の過ごし方に、マイのワクワク感は加速する。
そんなマイを見て、イサも心が穏やかになった。
“マイには、やっぱり笑っててほしい。
悲しい顔より、元気な顔の方が、合ってる。
俺でできることがあるなら、何でもするからな”
護衛という名の任務のためだけではない。
ひとりの女の子として、イサはマイのことを徹底的に守りたいと思った。
鋭いエーテルは、早いうちからイサの恋心に気がついていた。
というよりも、『昔から知っていた』という方が正しい。
エーテルは、幼い二人をあたたかい目で見守りながらも、切ない瞳でイサ見つめたのだった……。