「わかったよ。私の荷物は、エーテルって子が何とかしてくれるわけだし。

なんだかよく分からないけど、私を守るためにみんなが必死になってくれてるのだけは分かったから……」

「ありがとう、マイ。

じゃあ、エーテル。準備を頼む」

イサがそう言った瞬間、部屋の中にあるマイの荷物や商売物は、跡形なく消えた。

「なっ、何が起きたんだい!?」

人知を超える現象を目の当たりにし、テグレンはびっくりして後ろに倒れそうになる。

ところせましと積まれた荷物や人のぬくもりがあふれていた部屋は、一瞬にして、生活感のない殺風景な空き部屋となった。

「ありがとう、エーテル」

イサの言葉と同時に白い光がやんわりと現れ、そこから紫色の髪をした二十歳くらいの女性が現れた。

「マイ様の荷物は、問題なく収集できた」

エーテルはミステリアスな赤紫色の瞳で、そっけなくつぶやく。

「はい、これ。あなたの荷物」

エーテルはマイに、3cm四方の正方形の物体を渡した。

「これ、何? 積み木みたい」

マイはそれを人差し指と親指でつまみ、頭上にかざす。

「それがマイの荷物だ」

イサが言った。

「えっ、これがっ?

どう見てもただの木の切れ端にしか見えないよ~」

「それはエーテルの魔術がかかってるんだ。

エーテルは、どんな大量の荷物もこうして小さい木にまとめる力を習得してる。

木の精霊の力をかりているから、そういう感じの魔術がかかるんだって聞いた」

マイは目を見開き感動した。

「エーテルってすごいっ! こんな力、初めてみたよっ。

いろんな本を読んできたけど、こんな現象はどの魔法書でも見たことがないもんっ」

「60年以上生きてるけど、こんな術は初めて見たよ。

あんた、何者なんだい?」

テグレンも目を白黒させている。

エーテルは伏し目で、

「私にはまだ任務があるので、詳しい話はイサに聞いてください。ではまた」

と、現れたときと同じように白い光の中に消えていった。