ルーンティア共和国の人間達から、漏れ聞こえる会話。

フェルトとレイルは耳を澄まし、彼らの話をインプットしようとした。

全ては聞き取れなかったが、どうやら、ルーンティア共和国の者もガーデット帝国の黒いウワサを耳にしてここへやってきたらしい。

そうして、廃墟と化したここ·トルコ国の跡地を徹底的に捜索しているのだ。

ルーンティア共和国は、ガーデット帝国の悪いウワサを実証する物を探し出したいそうだ。

フェルトとレイルは、複雑な気持ちで息をのんだ。

そういった理由で自分達の故郷に足を踏み入れられるのは、切ない。

けれど、それによってルーンティア共和国が何かを掴んでくれたら、フェルト達にとっても好都合なので、黙って見ていることにした。


だが、やはり不自然なのも否(いな)めない。

長い間、この土地は放置されていた。

戦火が消えたあと、トルコ国を滅ぼした謎の敵はこの地で何かを探していたらしいが目的の物は何も得られなかったそうで、結局、その後、誰の関心も引くことなく、夜間に魔物が住み着くだけの場所となった。


禁断魔術は、書物や書類に記して保管しないこと。

それが、トルコ国の決まりだった。

悪用や流用を防ぐためである。

禁断魔術は、トルコ国王の血を継ぐ王族の後継者、あるいは王族の人間と婚姻関係を結んだ者だけが受け継げる仕組みだった。

フェルトとレイルは王族の親戚に当たる血筋に生まれたので、禁断魔術を知っている。

今となっては、どのくらい血の濃い親戚なのかは、分からない。

こうして共に旅をするまで、お互いが親戚だったことすら知らなかったのだから。

トルコ国にて、厳重に管理されてきた禁断魔術。

それを何かに記録し残そうとした者は、有無を言わさず処刑された――。


トルコ国跡地を調査すること丸1日。

ガーデット帝国に関する情報を何も得られなかったルーンティア共和国の人々は、スタスタと帰っていった。

監視に疲れたフェルトとレイルは息をつき、その姿を見送る。

「フェルトさん。

今までも何回か調べてましたけど、ルーンティア共和国については、もっと調べる必要がありますね」

「ええ、そうですね。

何だか嫌な予感がします……。

急ぎましょう」


その日の夜。

フェルト達は、ルーンティア共和国の城下街で宿を取った。