レイルとフェルトは、行動を共にしていた。
母校のトルコ国を復興させるべく、彼らは独自に動いている。
何者かが意図的にトルコ国を滅ぼしたのは間違いない。
だが、それ以上めぼしい情報はつかめず、一番怪しいガーデット帝国からは何も出てこない。
二人は、トルコ国のあった場所へ来ていた。
今は、崩れた石垣が横たわり、ホコリにまみれた古い空き家が建ち並ぶ廃墟と化している。
ここに来ると、二人は嫌でも思い出す。
それぞれの血塗られた過去を……。
視界をさえぎる業火。
敵兵士の剣の切っ先。
泣きわめく子供の甲高い声――。
禁断魔術を使える血筋にあったトルコ国の王。
彼はなぜ、アッサリ敵の手に落ちたのか。
したたる鮮血。
逃げまどう国民達。
それらはまるで夢だったかのように、廃墟はシンと佇(たたず)んでいた。
レイルは瞳に涙を浮かべる。
フェルトは何も言わず、レイルの肩に手を置いた。
人の気配がした。
フェルトとレイルは青ざめ、姿を消す魔術を使って、その気配から遠ざかった。
姿を消しながら観察を続けると、そこには、どこかの国の王族の家臣(かしん)らしき者達の姿が。
フェルトは、そのうち数人の顔に見覚えがあり、冷や汗を流しつつも目をこらして彼らを見た。
“あれは!! 間違いないです……。
ルーンティア共和国の人間ですね。
さすがに、国王と王妃は来ていないようですが”
エーテルが次期王位を継ぐことになっている、ルーンティア共和国。
トルコ国跡地に、なぜかその関係者が来ている?
以前、オーラを通じてエーテルから感じ取った、彼女の悲しい過去の記憶。
フェルトはそれを思い出した。
記憶の内容まではわからないが、フェルトは胸騒ぎを覚える。
“もしかして、トルコ国襲撃の件には、ルーンティア共和国が関係しているのでしょうか?”
レイルも同じことを思ったらしく、手を震わせてルーンティア共和国の人達を見ていた。
会話を聞くために、二人は姿を消して彼らとの距離を詰める。
ルーンティア共和国の国王や王妃と違い、彼らは魔術を使えるわけではないので、フェルト達の気配に気づくことはなかった。
“エーテルは陰のあるコだとは思っていましたが……”
フェルトの心に暗い影がさす。