イサの話を聞きながら、マイは驚き、王子という立場は苦労も多いのだと知った。

“いつも凛々(りり)しくて、自信ありげに見えるイサにも、そんな不安があったんだ……”

イサの知らない部分を見た気がした。


話し終わると、イサは遠くを眺めてため息をつく。

「国のために、民のために、王子としてできることは全てやってみせる。

そのつもりで今までやってきた……。

でも、時々こわくなる。

こんな臆病な俺が、あの国を治め、守っていけるのか、って……」

マイはイサに同情した。

「うん。いつもあんな風に知らない人達に追いかけられたら、ツラくもなるよね。

でも、逆に言えばそれは、イサが人望を集めるのが上手ってことじゃん。

嫉妬するヤツらなんて、無視したらいい」

魔法使いゆえに、マイは一部の人間から妬まれ嫌われていた事を思い出し、言った。

「たしかに、嫌われるのはツライ……。

出来ることなら、みんなに自分のありのままを受け入れてほしいって思う。

私も同じようなことあったから、分かるよ。

でも、イサは、私とは違って、みんなに必要とされてるんだよ。

だから、こうして私の護衛なども任されてるんだし。

つまらない人達の心ない言葉や態度に振り回されて、イサの良いところをつぶすなんて、もったいないよ。

だから、さ……。なんていうか、うまく言えないけど……」

イサに、自信を持ってほしい。

マイの心はイサに通じたようで、イサは頬を赤くし、

「ありがとう、マイ。

やっぱりマイは、マイだな…。優しくて……。

昔と、変わってない」

と、照れ笑いを浮かべて嬉しそうにマイを見つめた。


マイには、昔の記憶を封印する魔術がかけられているため、マイにそんな記憶はなかったが、イサはちゃんと覚えていた。

幼少の頃の、優しかったマイを……。