マイの食事姿を見て、イサは柔らかな表情をしている。

「そんなに見られたら食べづらいよ」

「ごめん。マイが食べてる姿って、幸せそうでいいなぁって思って。

見てていい気持ちになる」

マイはその言葉の意味があまりよくわからず、

「そう? だって、おいしいモノ食べてたら、普通そういうカオになるでしょ?」

と、テーブルの上に並んだ料理をパクパクと口にした。

ハーブチキンや南国果実100%のジュース、はんぺんの洋風焼きが並んでいる。

イサは城での食事風景を脳裏に描き、

「城では、マイみたいな表情で食事をする者はいなかったな。

稽古同様、食事も、義務的に行うものでしかなくて。

それが、当たり前だと思ってた」

と、スイーツを口にした。

マイは、いつも無表情で食事を口にしているイサを思い起こす。

「でも、イサだってスイーツ食べる時、なんか生き生きしてるよ。

今だって、そうだし」

「……それは多分……。

マイといるおかげだな」

瞳にかすかなぬくもりを浮かべ、イサは微笑んだ。

“イサ、スイーツ意外の食事は、無表情で食べてるよね。

城でも、そうだったんだ……”

マイは、一人暮らししていた頃の自分を思い出した。

その時はよく、テグレンが手作りのご飯を振る舞ってくれたため、食事の時間は楽しいもの…という記憶しかない。

その分、時折一人で食べる食事は、とてつもなく寂しいものだった。

旅に出てからはイサ達と共に食事をしていたので忘れかけていたが、一人で取る食事はなぜあんなにおいしくなかったのだろう。

マイはそのことをイサに話した。

イサは穏やかな表情に、切なさをにじませる。

「たしかに、一人でする食事は寂しいよな。

俺もほとんどそうだったしな。

マイにとってのテグレンのように、俺のために手料理を作ってくれる人間もいなかった」