マイは専門的な魔法を学ぶため旅立ちを決意し、テグレンも街にある自分の家を離れる準備をすることに決めた。


「けど、明日ってのは急すぎやしないかい?

マイもこのとおり、店を構えてるんだ。

すぐに旅に出るのは難しいんじゃないのかい?」

テグレンは問題点を指摘する。

「たしかに……。ここにはけっこうな量の薬があるし。

片付けには時間がかかるなぁ」

マイも旅立ちの準備には日数を要すると考えた。

だが、イサは晴れやかな顔で、

「それは問題ない。

マイの荷物を一瞬でまとめて保管できるよう、信用できる人に頼んである」

「イサには仲間がいるの?」

マイは首をかしげた。

イサはうなずき、

「ああ。彼女の名前はエーテルっていうんだ。

エーテルとは仲間というか、住む国は違うけど幼なじみで……。

俺の住むガーデット帝国は、ルーンティア共和国という国と友好関係にある。

エーテルは、そのルーンティア共和国の国王の娘なんだ。

俺とエーテルは、お互いに自分の親……それぞれの国王に今回の任務を命じられ、協力しあいながらここへたどり着いたんだ」

「……本当に、その子と一緒に来たのかい?

エーテルって子の姿は、ここにないじゃないか」

テグレンは周りを見渡す。

「エーテルは、この場所を敵に悟られないよう、自身の魔術を使って俺達の気配を消してくれてくれているんだ。

その魔術には時間制限がある。それが、明日までなんだ。

魔術を使ってる間、エーテルは姿を消している。無駄な力を使わないために」

イサの声色は、いつの間にかシリアスになっていた。

「エーテルがいない理由はわかった。

けど、安心できない状況だね……。

マイは、気配を消さなきゃならないほど危険な敵に狙われてるというのかい?」

テグレンの目も真剣だ。

「そうなんだ。俺も、国に帰るまで詳しい話は聞けないんだけど、マイの魔法の力を狙っている悪党がいるのは確かなんだ。

この場所を相手に突き止められるのも時間の問題……。

だから、早くここを出たい」