レイルも、フェルトと同じ目標を持っていた。
トルコ国を滅ぼした謎の勢力の正体をあばき、いつかトルコ国を復興させたい、と……。
レイルはフェルトより三つ年下の二十歳。
レイルも母国の滅亡に納得できなくて、フェルトのようにあちこちを旅して情報を探っていたのだ。
「かつてトルコ国を滅ぼしたのは、ガーデット帝国かもしれません!!」
「……!! やはり君も、そういう情報に行きついたのですね」
そう言いフェルトは、無意識に声をひそめた。
実はフェルトも、ガーデット帝国が母国のトルコ国を滅ぼしたかもしれないという情報を、けっこう前に入手していたのだ。
だが、そういった歴史は公の歴史書には記載されていない。
昔ガーデット帝国に住んでいた者から聞いた噂話程度の情報なので、信じていいものかどうかも分からない。
レイルは、イサ達を異空間に閉じ込めてまで彼らを足止めしたもう一つの理由を話した。
「過去のガーデット帝国の行いだけじゃありません。
ガーデット帝国は、今もおかしな動きをしています。
物証はまだありません……。でも……。
ガーデット帝国は、怪しいんです!!
俺、ガーデット帝国には何回も足を運んでいるんですが、国王が裏でコソコソと何かをしているんです」
「国王とは、イサの父親のことですね。
ガーデット帝国国王、ヴォルグレイト……」
「そうです!!
そもそも、自分の息子でもあり、国王の次に偉いイサを、護衛の任務に就かせていること自体がおかしいんです。
ヴォルグレイトの命令は絶対だし、イサも剣術能力が高いから、護衛を任せたら完璧にやってのけるのかもしれないけど、そういうことじゃなくて……」
フェルトはレイルの疑惑に耳を傾けた。
イサは本来、国にいなくてはならない立場だ、と、フェルトも思っていた。
レイルも同じ疑問を持っている。
なにより、息子のイサが異空間に閉じ込められていることを、あのヴォルグレイトが気づかぬはずはないのだ。
イサは国の存続に必要な人間であるのにも関わらず、ガーデット帝国の人間は、イサを助けたり警告をしないどころか、フェルトが彼らを異空間から救い出すまで野放しにしていた。
フェルトもそれには不信感を感じたが、どうやらレイルも同じ考えのようだ。