「芹沢さん、トビの仕事辞めて新しい職につくんだって」
「え?…それって、」
「違うよ。誘われてたホストじゃないよ。ファッション関係だって」
「ファッション…」
そう聞いて少しだけホッとしてしまったのは何でだろうか。
でも、もう一度あの業界に戻ってしまうと、これ以上身体に負担が掛ると、そう思ったのは間違いないと思う。
「ホストの仕事をしてた時から雑誌の記者とかそー言う関係者の人から声掛けられてたんだって」
「……」
「だからそっち系に行くみたいだよ。アパレル関係に」
「…そう」
「だからあたしも働くの」
「え?」
思わず顔を上げてしまったあたしに、さっきよりか葵の表情は緩くなっててグラスを手に取る。
「美咲、忙しそうだったから言えなかったんだけどさ、香恋は保育園に行かせるの。その間、働こうと思って」
「ホントに?」
「ホントだよ。で、働く所探してたんだけどさ中々なくて」
「……」
「そんな時、諒也からその話しを持ち出されてね。まぁ、芹沢さん繋がりだけど」
「そっか」
「で、今日はその報告」
そのまま頬を緩めてレモンティーを口に含む葵を見て、なんだかホッとしてしまった。