天野さんと一条くんが旅立ってから数日。
今度は自分の番だと思っていたあたしは着々と準備にとりかかっていたその矢先。
「美咲…」
家のチャイムが鳴って出たその先には葵が居た。
「あ…、どうしたの?」
「ちょっと」
突然来た葵に驚く暇もなく、それどころか真剣さを現せてくる葵に、
「入れば?」
不思議に思ってしまった。
「おじゃまします」
そう言って入っていく葵は一人。
香恋ちゃんはきっと預けられている。
その一人で来たと言う事に、なんだか話が長くなりそうな予感がした。
「で、何?」
ソファーに座る葵の前にあたしも同じく腰を下ろす。
そして一度視線を下に落としていた葵はゆっくりとあたしに視線を向け、口を動かした。
「…芹沢さん、何日か前に退院したって」
グッと力強く見つめてくる葵に今度はあたしが視線を落とす。