「あたしも」

「元気で頑張れよ」

「一条くんも」

「あぁ。んじゃ、そろそろ行くわ」

「うん」


スッと立ち上がった一条くんは、隣に置いてあった天野さんの荷物を持って辺りを見渡す。

その同じ方向に視線を送ると、遠くの方から駆け寄って来る天野さんの姿が目に入った。


「ごめんっ、もう行くの?」

「行く」


一条くんが手渡した荷物を天野さんが掴むと、天野さんはあたしに視線を送る。


「美咲センセっ、また会おうね」

「うん。そう、だね」


会う事はもうないと分っていても、あたしは笑顔で天野さんにそう言葉を返す。

それを一条くんは分っているから“また”なんて言葉は言わなかった。


「バイバイ、センセ」

「うん、元気で」

「じゃーな、美咲センセ」


クッと口角を上げて微笑んだ一条くんに頬を緩める。

手を振りながら笑みを漏らして歩いていく天野さんに軽く手を振った。


少しずつ小さくなっていくその2人の背中をボンヤリと見つめた後、あたしは背を向けて歩き出した。