「でも、仲良さそうで羨ましいけどね」
「仲良くないよー」
顔を顰めながら呟いた天野さんは、そっと立ち上がり地面に置いていた空き缶を手に取った。
「捨ててくる」
そう言った天野さんはこの場からスッと姿を消し、
「なぁ、美咲ちゃん?」
その落ち着いた一条くんの声にあたしは視線を向けた。
「うん?」
「マジで行くの?」
そう言ってきた一条くんの言葉が何処へなのかはっきりと分った。
「うん、そのつもり」
だから嘘をつく事も曖昧に言うつもりも全くなかった。
「…そっか。じゃ、もう逢う事ねぇな」
「だね。天野さんは知ってるの?」
「いや、知らねぇと思う」
「そう。じゃ、このまま言わないで。変な心配掛けたくないや」
「あぁ」
「一条くん、ありがとう。ごめんね頼りない先生で」
「ホント頼りねぇセンコーだったけど、俺は楽しかったよ?」
一条くんはクッと口角を上げて微笑んだ。