「だから来たの」

「そりゃどーも」


クッと口角を上げた一条くんは、相変わらずの端正な顔。


「ねぇ、聞いてよセンセっ、」


あたしの腕をグッと掴んだ天野さんは少しだけ眉に皺を寄せてあたしを見上げる。


「うん?どうしたの?」

「奏斗ったらね、ちょーっとモテるからってイイ気に乗ってんの!」

「乗ってねぇよ」


素早く返って来たどうでもいいような一条くんの声。

そんな事すら無視した天野さんは更に口を開いた。


「卒業して別れるからって寂しい女の子達に告られて浮かれてんだよ!」

「だから浮かれてねぇって」


そう言って更に一条くんは顔を顰める。


「だってそーじゃん」

「全部断った」

「あーあ、可哀相…」

「つか何だよ、お前。言ってる事めちゃめちゃ」


2人の会話に思わずクスクスあたしは笑みを漏らし、


「うーん…もしかして2人、付き合ってる?」


コクンと首を傾げた。


「は?…んでコイツと」

「やめてよ、センセ」


同時と言っていいほどの2人の言葉にもう一度あたしは笑みを漏らす。

なんだかんだ言って、仲良すぎ。