まさかあたしが来てる事なんて思ってない天野さん。

あたしを見た瞬間にどんな反応をするんだろうと、思いながらソファーが沢山ある中から、天野さんと一条くんの後ろ姿を発見した。


近くまで辿りつくと天野さんは未だに携帯を握りしめてて、その隣で一条くんはパンフレットを開く。


そのまだ気づいてない2人の背後から、


「あの、すみません…」


遠慮気味に小さく声を掛けた。


「…はい。って、え、えぇ?」


そう声を出したのは一条くん。

振り返って驚く一条くんに釣られて天野さんも同じく目を見開いた。


「セ、センセッ!?」


その驚いた反応にあたしはクスクス笑みを漏らした。


「ってか、え?何で美咲ちゃんがいんの?」

「もしかしてセンセー、さっきのは確認だったの?」

「うん。そう」


ニコっと笑ったあたしに天野さんの表情がパーっと明るくなった。


「つか、何で?」


不思議そうにする一条くんは次第に頬を緩めてく。


「何でって見送りだよ。それにあたしまだ一条くんにおめでとうって言ってないんだけどな」

「なんの?」

「なんのって卒業でしょ?その日忙しそうだったから言ってなかったしね」

「あー…」

「無駄にモテるからね、奏斗は」


そう言って、天野さんは苦笑いを浮かべた。