「ちょっとは落ち着いた?」

「…うん」

「なら俺の役目終わり」


視線を一条くんに向けるとクッと口角を上げて一条くんは窓の方へと視線を向ける。


「…ほんと、ゴメン」


そう言ってあたしは一条くんから視線を避け、ペンを持ち直した。


「俺さ、施設に居る時に5歳年上のすげぇ泣き虫な女いたの。まだ俺が年長だった頃、そいつは小学5年なのによ、すげぇ毎日泣いて泣いてしてた」

「……」

「俺らみたいなガキの面倒見ててさ、多分嫌だったんだろうな。って年長ながらに俺は思っててさ、でもうっとおしいくらい毎日泣くから、何でそんなに毎日泣くの?って聞いた事、今でも覚えてる」

「……」


何をどう思ったのか一条くんは自ら過去を話しだした。

でも、何だか聞かなきゃいけないと思ったあたしは口を開く事なく、ただ一条くんに耳を傾けた。


「んじゃあさ、そいつ言うんだよ。辛いことがあったら沢山泣いたらギフトが来るからって、」

「…ギフト?」


思わず小さく呟いたあたしは視線を上げ一条くんを見つめる。

そんなあたしの視線に気づいた一条くんは軽くあたしに視線を向けて、


「そう、ギフト」


そう薄ら微笑んで、また視線を窓の外に向けた。