「マジ、何かあった?」


真剣にそう問い掛ける一条くんに軽く左右に首を振る。


「何でもない」

「何でもねぇ事ねぇじゃん」


そう言った一条くんは机を挟んだまま、あたしの頭をグッと引き寄せ自分の胸へと押し寄せた。


「…ここ、学校」

「知らねぇよ、そんなの」

「誰か見るから」

「誰もいねぇし」

「あたし、…センセーだから」

「知ってる。俺、生徒だから」

「誰かに見られたらヤバいよ」

「誰もいねぇし。つか、うるせぇよ、喋んな」


だから思わず口を閉じてしまった。


一条くんの胸を借りて泣いてしまったのは何度目になるんだろう。

あってはいけない、してはいけない事をしてしまったあたしは情けなくてどうしようもない。


だけど、分んないけど一条くんの胸を借りると自然と落ち着く。

無意識にいつも元に戻ってる。

だから、もしかすると一条くんも分ってるのかも知れない…



「…ごめん」


どれくらい経ったか分らない時、あたしは小さく呟いて一条くんの胸から頭を離す。