「…ごめん、帰って」


思わず呟いてしまった言葉に一条くんの揺すってた手が止まる。


「もしかして泣いてんの?」

「違うから。お願いだから帰ってよ。…採点出来ない」


採点の所為にしてしまう程、今の自分を見られたくない。

一条くんに縋りつく事もしたくないし、迷惑掛けたくない。


そう、優しく声を掛けられたら、



…どうしようも、ないんだ。



「つか採点じゃねぇだろ。なぁ、美咲ちゃん。顔上げろって」


グッと引かれたあたしの腕。

額からスッと腕が抜けた瞬間、目に溜まっていた滴がポタリと机の上に落ちる。


…何で、今出るの。


「…ごめん」


素早くスッとふき取る涙の滴。

俯く先に見えるのは、いつも念入りに綺麗にしている淡いピンクのデコレーションの爪。


その爪を隠すかのようにギュっと拳を作った。