“いや、違うから”


そう言った翔の言葉が自棄に頭に沁みついて。


“あたし達もう一度――…”


アカネさんの言葉が駆け巡る。


そしてリアって人に言われた、“返して!!”って言われた言葉に苦しくなった。


もう何をどうしていいか分らないこの状況。

別れを告げたのはあたしのほうなのに、なんかよく分らない感情で胸が痛む。



「…美咲ちゃん」


授業が終わって静まり返った教室。

人が集まる職員室は気分的に嫌だから、あたしはみんなが帰った後に英語のプリントの採点をしていた。

そして不意に聞こえた声にあたしは手を止める。


「あ、一条くん…。まだ居たの?」

「うん。つか元気ないね」


一条くんはそう言って、あたしが座っている前の席の椅子に腰を下ろした。


「寒いから…」

「は?何その理由」


そう言った一条くんはクスクス笑みを漏らした。


「冬は嫌い」

「俺も」

「…疲れた」


こうやって自分の気持ちをさらけ出すのも、いつも一条くんだ。

こんな事言ったって、迷惑なだけなのに。


だけど一条くんは何も嫌だとは言わない。