「もしかして彼女…だった?」

「……」

「だったらゴメン。余計な時に来たかも――…」

「いや、違うから」


“いや、違うから”


頭の中でリピートされるその言葉。

凄く嫌な響。


もう今じゃ違うけど、でもそれを翔の口から聞くと無性にもどかしい。


「そっか。あ、あのね翔。こんな時に言うのもあれだけど、あたし達もう一度戻る事出来ないかな?」


その言葉でドクン心臓が高鳴った。


…やっぱ、元カノ。


「…え?俺とアカネが?」

「そう…お互い自然消滅的だったから――…」


それ以降は耳に入ってなかった。

こっちに向かってくる点滴を抱えた看護師さんで、あたしは素早く足を動かしてた。

看護師さんとすれ違いざまに軽く礼をされ、そのまま、


「芹沢さーん、点滴です」


その声を後に、あたしは病院を離れた。



…アカネ。


お互い自然消滅…



“もう一度、戻る事は出来ないかな?”



…何で、今更な訳?

何で、このタイミングな訳?



リアといい、アカネといい…初めて知った翔の女広さにもどかしくも、切なかった。