「あ、あのっ、」
その呼び止めるあたしの声で女の人は振り返る。
コクンと首を傾げる女の人は、やっぱし綺麗なお姉系。
「あのっ、もう帰るんで…」
「え、でも…」
困惑気味で満ちた声は翔に向けられる。
引きさがりながら翔を見ると、翔は視線を落としたままだった。
「大丈夫です。もう話し終わったんで」
「あ、うん…」
「じゃ、お大事に」
軽く頭を下げて部屋を出た瞬間、壁に背をつけて深く息を吐いた。
何やってんだろ…
これじゃあ、あたしが翔と女をくっつけてるようなもんだ。
けど、…でも、少しはこれで良かったのかもしれないって言う自分が心の中に存在する事に、何だか複雑な気分を味わった。
「ご、ごめんね。なんか何度もきちゃって」
「いや…」
「これ、飲み物買って来たんだけど」
「悪いな」
少し開いた扉から聞こえる翔の声と女の声。
正直、聞きたくないけど、これ以上足が動かなかった。